引っ越しなどで賃貸物件を退去する時、トラブルになりやすいのが退去費用に関わることです。
管理会社や貸主が不当に高い金額を請求してくることがあり、消費生活センターにも毎年1万件ほどの相談が寄せられているほどです。
このページには退去費用とはどういうものか、どこまで払わなければいけないものなのかといったことについて書いています。知っていると退去費用が格段に安くなる可能性もあるのでご一読ください。
退去費用とはどういうものか
まず退去費用というのは原状回復費用のことを指します。原状回復というのは入居時の状態に戻すことです。
ただ経年劣化(時間が経つにつれ自然と起こる劣化)や通常使用による損耗は貸主の負担となります。
つまり退去費用としては「部屋を借りた時の状態に戻す費用 ― 自然損耗分」の金額を払えばいいということです。
居住年数が多くなると物の価値は低くなる
減価償却の考え方で、部屋に備わっている設備の残存価値は年が経つにつれ低くなります。
例えば壁紙の残存価値は6年経つと1円になります。ほぼ0円ですね。
もし2年間住んでから退去するとなると、その時の壁紙の残存価値は元の3分の1(2年÷6年として)となっています。
故意や過失による損傷は借主負担になる
だからと言って長年住んで残存価値がなくなった設備をわざと損傷したりしても、1円も払わなくていいのかというとそうはいきません。
そんなことが認められてしまえば、長年住んでいればどんなに部屋の設備や備品を壊しても問題がないとなってしまいます。
その設備が継続して使用可能だった場合、入居者が原因で壊れてしまったのならば本来の状態にまで戻すための費用を払わなくてはいけません。
次の入居者のための費用は払わなくていい
退去する時に請求されやすいのが部屋のクリーニング代や鍵交換費用です。
これらは次の入居者のための費用なのですが、こういったものは家主が負担するものとされています。
請求書にこれらの項目があれば支払いを拒否できます。
特約により借主負担とされていたら
賃貸契約時に特約として、本来借主が負担すべきではないものを借主負担としている場合があります。
契約書にあるのだから仕方ないと思うかもしれませんが、特約は有効と認められないケースがあり、必ずしも払う必要があるとは限りません。
特約が認められる場合
次の3つの条件が満たされている場合は特約が認められます。
[1] 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
[2] 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
[3] 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインからの引用
これだけではちょっと分かりづらいですね。具体的に言うと以下のようになります。
特約を無効にできない場合
たとえばハウスクリーニング代として2万円など、具体的な項目と金額が記載されており、請求金額が不当に高いものでなく、そのページに記名・押印がある場合は特約を無効とするのはかなり難しいです。
特約を無効にできる場合
請求項目だけで具体的な金額の記載がない、または請求金額が不当に高い、または特約が記載されたページに記名・押印がない場合はその特約を無効にできる可能性が高いです。
支払いを拒否してもごねられたらどうするか
借主側の負担になるのはおかしい項目について支払いを拒否すると、「そんなことはありえない」とか「契約書に書いてあるから」などと言ってごねられることもあるでしょう。
そうなったときはスマホなりボイスレコーダーで音声を録音し、「〇〇の支払いは強制ということですね?」と確認を取ってみてください。
これでダメ、あるいはこの方法を取りたくなければ請求書をもらって一旦帰り、その請求書に加えて賃貸契約書も用意して消費生活センターに相談に行きましょう。
消費生活センターには電話相談もできますが、実際に書面を見せて「契約書ではこうなっていて、このような請求をされましたが妥当でしょうか?」と聞くのが早いですしお互い正確に情報をやり取りできます。
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